スキップしてメイン コンテンツに移動

【2018年 10/21特別講座】秋期2回目 TA感想リレー(7)


段々と冷え込みますが、みなさん体調など悪くされていないでしょうか?(私はここ数日で、湯たんぽを入れ始めました。)



更新が遅くなってしまいましたが、先日は松波めぐみさんにお越し頂き、特別講座「障害の社会モデルとジェンダー~障害女性にとって社会的障壁とは~」が開かれました。

以下TAのHによる感想リレーです。

―――

松波さんは、これまで長年に渡りご自身がなされてきた活動を辿りながら、その中で考えてきたことについてお話ししてくださいました。元々は人権教育に関心を持ち大学院に入られ、その直後に「障害学」と出会われたこと、後には介助者としての実践にも携わるようになられたこと、フェミニズムやジェンダーの視点と向き合うようになられるまでには更に時間があったこと、「障害者権利条約」への関心から国連の会議へ傍聴に向かわれたこと、2008年頃から京都府における障害者に対する差別禁止条例の制定へと向けた運動に携わることになられたこと、などなど。

研究者というよりは実践家であり教育者であるとご自身を紹介される松波さんが、「障害学」への関わりはある意味では趣味のようなものだと仰られつつ、ただ何よりも「障害の社会モデル」の考え方がもっと広がればいいと感じている、それが広がれば、少しずつかもしれないけれど、社会が変わると感じている、とも仰られていたのが、私にはたいへん印象的でした。

また、80年代イギリスの障害学の中で提起されていた「障害の社会モデル」と「ジェンダーの視点」の類似性という論点を紹介くださると同時に、では「障害のある女性が直面する困難の原因は?」という大切な視点を、「複合差別」という切り口から取り上げてくださいました。障害者運動において障害当事者の女性が抱える特有の困難があるということ、あるいは逆に、フェミニズムにおいて不可視化されてしまう障害者の問題があるということ。こうした問題について考える機会が持てたということは、ものを「学ぶ」上での大きな一歩だと感じました。しかし同時に、松波さんご自身の経験を交えたお話は、(カッコつきの)「運動」や、あるいはより日常的なものの中で、具体的な矛盾に直面しつつ、葛藤を抱えながら模索し続けることについても考えさせてもらえるものでした。

お話の最後では、旧優生保護法下で行われていた「強制不妊手術」に対し、今年になって日本政府を相手に訴訟を起こした女性の話についても触れられました。当事者の女性が声をあげ、世論が喚起させられ、問題が社会に突きつけられる。しかし、それはかつてから公然と「暗黙の了解」とされてきたことでもあって、声をあげた女性の背後には、多くの声をあげられなかった障害を持つ女性たちがいたはずです。この提訴自体は画期的な出来事であると同時に、歴史的な問題でもあり、歴史の堆積としてある社会の問題でもあり、その上でいまを生きる私たちに強く突きつけられている問題でもあるはずです。そこで、私たちに何ができるのか。声が届き、知ってしまったからには、問いを手放さずにいたいなと思いました。

―――

松波めぐみ(まつなみ めぐみ)

大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得退学(生涯教育学)、(公財)世界人権問題研究センター研究第五部(人権教育)専任研究員を経て、現在、立命館大学生存学研究センター客員研究員。大阪市立大学、関西大学、龍谷大学ほか非常勤講師。主な著作に「障害者権利条約ーー『同じ』権利を実現するために」(『地球市民の人権教育ーー15さいからのレッスンプラン』解放出版社、2015年)、「障害をもつ女子の『ジェンダー化』と教育」(『ジェンダーで考える教育の現在』解放出版社、2008年)など。

講義テーマ : 
フェミニズム・ワークショップ「障害の社会モデルとジェンダー~障害女性にとって社会的障壁とは~」

 障害者が直面する困難の原因を、身体の解剖学的特徴ではなく、健常者中心社会が設けた障壁に求める「障害の社会モデル」の考え方は、もとよりジェンダー概念と類似している。障害女性が経験する困難の背後には障害者差別と性差別が複雑に絡み合っているが、それを解きほぐすのは容易ではない。2008年頃より京都の障害女性とともに差別禁止条例をつくる運動に参加してきた、その過程で考えたことについて。

このブログの人気の投稿

「トランスの人たちを知っていますか?」【北京LGBTセンター制作動画】

本動画は、北京LGBTセンター、北京大学、国連開発計画が、オランダ大使館の支援を受け共同で実施した「2017年中国トランスジェンダー全国調査」の結果を紹介・解説したアニメーション動画です。 ふぇみ・ゼミでは2019年4月に、北京LGBTセンターの辛穎さんを招いて講演をしていただきました(辛穎さん講演については末尾のリンクを参照)。そのご縁で、同センターの許可をいただき、ふぇみ・ゼミにて日本語字幕制作(翻訳者・熱田敬子)の上、本動画を公開します。   動画では「トランスジェンダー」を、トランス男性、トランス女性、ジェンダークィアを含むカテゴリーとして紹介しています。 また、トランスジェンダーではないけれど、「性別は男女の二種類しかない」という価値観を服装等のジェンダー表現によってゆさぶる人たちとしてトランスベスタイトというカテゴリーも紹介されています。その際、レディービアードさんを模したアニメーションキャラクターが登場しますが、これはあくまでも例示であり、トランスベスタイトによって実践される性表現は実際には多様である、ということを補足しておきます。 参考)レディービアードさん( http://www.ladybeard.com/ ) 【ふぇみ・ゼミ特別公開講座「3つの場所のフェミニズム」vol.0】 北京LGBTセンター事務局長辛穎さん「1995世界女性会議の後 中国LGBT運動は野火のように拡がった」 https://femizemi.blogspot.com/2019/04/3feminism-0.html ハフポストによる当日の取材記事は下記: 「中国のLGBT運動はどのように広がっていったのか? 北京LGBTセンター事務局長・辛穎さんは語る」

【ふぇみ・ゼミ緊急企画 #Me Tooと民主主義】1/29「草津の女性町議リコール問題に見るジェンダーと民主主義」

ふぇみ・ゼミでは、【ふぇみ・ゼミ緊急企画 #Me Tooと民主主義】「草津の女性町議リコール問題に見るジェンダーと民主主義」と題して、1/29にオンライン講座を行います。講師はジャーナリストの林美子さんです。 そしてこのイシューについて、そもそも何があったの?という人のために、ふぇみ・ゼミ学生スタッフがおさらいを作りました。このページの最後に載せてあるので、ぜひこれだけでも読んでいってください😆(画像をクリックすると拡大されます) そしてもっと詳しく知りたいなと思ったら、ぜひ講座の方にもご参加ください! 後から配信もございますので、当日都合が合わない方も録画映像をご覧いただけます。 講座の詳細は、こちら( https://femizemi-kusatsu.peatix.com/ )をご確認ください。 2021/01/29 (金)19:00 - 21:00 会場:オンライン チケット 一般  ¥1,500 学生/ふぇみ・ゼミ寄付者 ¥1,000 2020年度後期ふぇみ・ゼミ生 ¥500 お申込み: https://femizemi-kusatsu.peatix.com/view お申込み: https://femizemi-kusatsu.peatix.com/view  

【ふぇみ・ゼミ特別公開講座「3つの場所のフェミニズム」vol.0】 北京LGBTセンター事務局長辛穎さん「1995世界女性会議の後 中国LGBT運動は野火のように拡がった」のお知らせ

ふぇみ・ゼミ企画 特別連続講座「3つの場所のフェミニズム」vol.0 北京LGBTセンター事務局長・辛穎(Xin Ying)さん講演会 講演タイトル「1995世界女性会議後、中国LGBT運動は野火のように広がった」 2019年4月30日(火・休) 13:30開場 14:00~17:00 東京大学本郷キャンパス経済学研究科棟3階2番教室 資料代 1000円(ふぇみ・ゼミ受講生は無料) 事前申し込みは不要です。 お問い合わせ先  femizemi2017@gmail.com 司会 梁・永山聡子 コメンテーター 飯野由里子、高柳聡子 通訳・コーディネーター 熱田敬子 主催 ジェンダーと多様性をつなぐフェミニズム・ゼミナール~ふぇみ・ゼミ~ 共催 東京大学大学院教育学研究科 バリアフリー教育開発研究センター ※講演は中国語です(日中通訳付き)。通訳部分を含む日本語の発言について、PC文字通訳がつきます。託児はありませんがお子様連れも歓迎します。その他配慮が必要な方はお問い合わせください。 講演テーマ:「1995世界女性会議後、中国LGBT運動は野火のように広がった」 1995年北京の懐柔で、第4回世界女性会議が開かれ、189カ国と地区の代表、国連各機関と専門団体、また政府間組織とNGOの体表など、1.7万人が参加した。  95年の世界女性会議の後、NGOの存在が中国市民に認識され始める。そして、「ジェンダー主流化」の概念もまた、中国に入ってきた。  その頃中国では、同性愛は未だに非犯罪化されておらず(1)、病気とされていた(2)。第4回世界女性会議上で、全世界から300人以上のレズビアンが懐柔に集まり、NGOフォーラムの中で「ララ(拉拉)・テント」が承認された(訳注:「ララ(拉拉)」はレズビアン・バイセクシュアル・トランス女性など、女性のセクシュアルマイノリティの総称)。これは中国のララ・コミュニティと、国際的なララ・コミュニティの初めてのつながりでもあった。世界女性会議の後、北京のララ・コミュニティは組織化をはじめ、バーや個人の住宅で小規模な集まりを開催した。こうして、規模は小さいながら、徐々に一つのコミュニティが形成されていく。1997年、中国で初めての同性愛者コミュニティのホットライン99575が成立、同年中国で初めての...

ふぇみ・ゼミイベントカレンダー