こんにちは!スタッフのSです。
先日12月16日(水)に、第3回目の秋期ふぇみ・ゼミが行われました。
今回は講師に神谷悠一(かみや・ゆういち)さんをお迎えし、「当事者団体の役割と意義 ―政策の実現過程から考えるー」というテーマでお話しいただきました。
神谷さんは、性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会(LGBT法連合会)の事務局長を務めていらっしゃいます。また、一橋大学大学院社会学研究科客員准教授としてなど、様々な場面で活躍をされています。
神谷さんが活動されているLGBT法連合会は、全国77の当事者団体・支援団体など様々な団体の連合体で、性的指向及び性自認等により困難を抱えている当事者に対する法整備のための全国連合会です。2015年に創設、2020年に一般社団法人化されました。役員は総会の決議によって選出された、地域・ジェンダー・セクシュアリティバランスの取れた多様な5人からなっています。
LGBT法連合会は、法律を整備することを目的としていますが、法律をつくるためにはまず立法事実(何が困っているか、何が課題か)が必要です。そこで、相談機関などから声を集めて抽象化した「困難リスト」を作成し、行政や主要政党がこれを参考にしているといいます。
具体的に政策を実現するためには、国会議員との連携が必要で、超党派の「LGBTに関する課題を考える議員連盟」と連携し、SOGI差別禁止法の制定を目指しているそうです。また、政策提言の方法の類型には、「ステークホルダー型」と「個人(有識者)型」がありますが、LGBT法連合会はステークホルダー型への適合を企図した連合組織体だといいます。国は1から施策を作ることには限界があり、専門家たちが集まって民主的に決めた意見を知りたいと考えています。また、法律は団体の声でつくるものであり、個人の意見で制定することは邪道であるという考えもあります。よって、「広範な声」を「整理」できる「専門性」が求められるのです。
マイノリティの声を集めて代表するというようなことや、議員と連携するということについて、私はあまり良い印象を持っていませんでした。しかし、今回のお話を聞いてイメージが変わった部分がありました。実際に政策を実現するためには、どのような声が当事者からあがっているのかを整理して確実に届ける役割が求められていることを感じました。その際に、代表者の多様性を重視したり、広範な声を集めたり、様々な分野の専門家による学際的な視点を持つなどの工夫がされており、その点が非常に大切だと感じました。
制度によって義務化されれば、担当者にとっての「必修科目」になり、興味の有無に関わらず勉強し・対応することを求められる、おもいやりと心がけではなく、制度が人々の認識変えるというお話がありました。一方で、法律ができても守られていない、定着していないという問題があり、四苦八苦しているというお話もありました。人々の意識レベルで解決しようとするのではなく、地道に一つ一つの制度を作ったり、変えたりすることの意義を実感しました。また制度ができた後も、働きかけ続けなくてはならないと感じました。ふぇみ・ゼミに参加されている方は、現在の社会に満足していない方、変えたいと思っている方がほとんどではないでしょうか。今回の、当事者団体の意義と役割、また政策実現過程についてのお話は、今後について考えるときに、たいへん有意義なお話だったのではないかと思います。
次回は1月13日(水)に開催されます。2020年度ふぇみ・ゼミ最後の講義です。受講生の皆様は最終回もぜひご参加ください!
【ゼミ情報】
日時:12月16日(水)19:00-21:00
講師:神谷悠一さん
1985年岩手県盛岡市生まれ。性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会(LGBT法連合会)事務局長。一橋大学大学院社会学研究科客員准教授。東京都豊島区男女共同参画苦情処理委員。兵庫県明石市LGBTQ+/SOGIE施策アドバイザー。早稲田大学ジェンダー研究所 招聘研究員。
早稲田大学教育学部卒業、一橋大学大学院修士課程修了(社会学)。LGBTを支援するNPO等の役員を歴任し、2015年4月に、全国の当事者団体、支援団体、企業等で構成されるLGBT法連合会の事務局長に就任。企業・自治体・労働組合の研修を多数担い、特に具体的な施策についてアドバイスを行う。毎日新聞「ひと」欄、共同通信「時の人」、日本テレビ系「スッキリ」、他メディア掲載・出演多数。