ジェンダーと多様性をつなぐフェミニズム自主ゼミナール
2018年4月25日 初回ガイダンス
( ※9/16追記:秋期の講師・スケジュールを更新しました!)
( ※9/24追記:10月21日(日)の開催時間を修正いたしました。)
[春期の講師]
★熱田敬子(あつた けいこ) 担当日 5/11 Fri 19:00
東京下町育ち。フェミニスト、アクティヴィスト。ゆる・ふぇみカフェ運営委員、北京語翻訳通訳、ジェンダーや社会学の大学講師もやっています。研究テーマは人工妊娠中絶の体験談の聞き取り、日本軍戦時性暴力支援運動など。フェミとの遭遇以前から心に決めていたのは、結婚制度の中には絶対に入らないことでした。そう決めたところから見えた風景と、出会った人たちが私の人生の宝物です。
講義テーマ:「わたし」からはじめるフェミニズム
「個人的なことは政治的なこと」という、フェミニズムの大事な言葉があります。「わたし」の悩みや苦しみは、実は社会が生み出しているのかもしれない。そう考えて、フェミニズムは始まりました。
嫌なことは嫌だという。今とは違う自分の姿と、他者との関係、新しい社会の形を創り出す。それはとても創造的なことです。
その創造性が本当に力を持つためには、同じように声をあげるたくさんの異なる声に耳を傾け、「わたし」も変わらなければなりません。どうしてジェンダーとインターセクショナリティなのか、一年間のゼミのイントロとして一緒に考えましょう。
推薦図書
西山千恵子・柘植 あづみ編著(2017)『文科省/高校「妊活」教材の嘘』論創社
★堀あきこ(ほり あきこ) 担当日 5/30 wed 19:00
大学非常勤講師。マンガなどのポピュラー・カルチャーをジェンダー、セクシュアリティ、フェミニズムから考えています。批判的な目を持つことと同時に、「これは好き!」という視線も大切にしたいと思っています。講義テーマ:メディアの女性イメージ
SNSで次々と起こるネット炎上。「イヤだな」と思う表現は何が問題なのでしょう?エロ?女らしくしろって意識?フェミニズムで論じられてきた、ステレオタイプや性的客体化(性的モノ化)などの言葉から「イヤ」の中身を考えます。
推薦図書堀あきこ(2009)『欲望のコード―マンガにみるセクシュアリティの男女差』臨川書店
★飯野由里子(いいの ゆりこ) 担当日 6/13 wed 19:00
研究センター勤務。多様性と社会正義に関する教育コンテンツの開発・実施に従事する傍ら、フェミニズム理論、障害理論、クィア理論を行ったり来たり、くっつけたり混ぜ合わせたりする研究をしています。講義テーマ:フェミニスト・ディスアビリティ研究とは何か?
「障害のある女性は、障害のない女性(や障害のある男性)とは異なる経験をし、異なる視点から社会を見ている」。こうした気づきから始まったフェミニスト・ディスアビリティ研究が提起している課題について考えます。
参考文献
瀬山紀子「声を生み出すこと––女性障害者運動の軌跡」石川准・長瀬修編(2001)『障害学への招待』明石書店pp. 145-173
★梁・永山聡子(やん・ながやま さとこ) 担当日 6/27 wed 19:00
非常勤講師、アジア女性資料センター運営委員、ゆるふぇみカフェ運営委員、一般社団法人希望のたね基金(キボタネ)運営委員。東京生まれの在日朝鮮人3世。専門は社会学。植民地支配・被支配経験のフェミニズム、グローバルフェミニズムと社会運動に関心がある。共著に『社会学理論のプラクティス』くんぷる(2017)、「『慰安婦』問題と関わることーできることを見つける旅」『戦争責任研究』(2017)など。講義テーマ:被害者の「声」が世界を変えたー日本軍戦時性暴力被害支援と女性運動の成果と課題
性暴力の被害を語ることが今以上に「タブー」だった1990年代、それまで”公然の秘密”であった日本軍戦時性暴力(「慰安婦」「性奴隷」)被害実態を語る女性たちが勇気を持って登場した。その「声」はジェンダー・フェミニズムをパラダイムシフトさせた。本講義ではそれと向き合ってきた女性運動の成果と課題を学び、私たちの問題として考えたい。
推薦図書
神戸女学院大学 石川康宏ゼミナール(2006)『「慰安婦」と出会った女子大生たち』新日本出版 https://www.honyaclub.com/shop/g/g12196511/
★河庚希(は きょんひ) 担当日 7/4 wed 19:00
明治大学大学院特任講師。サンフランシスコ湾岸地域を拠点とする在日コリアン団体「エクリプス・ライジング」共同設立者、「日本多文化救済基金」共同設立者、「一般社団法人 希望のたね基金(キボタネ)」運営委員。京都府生まれ。専門はエスニック・スタディーズ。研究テーマは日米の帝国主義とその交差性、共犯性、そして環太平洋の有色人種の運動。論文に“Cultural Politics of Transgressive Living: Socialism meets Neoliberalism in pro-North Korean Schools in Japan” Social Identities: Journal for the Study of Race, Nation and Culture. Vol. 24, 2 (2018): 189-205など。講義テーマ:太平洋を横断する「有色女性 (Women of Color)」の連帯:日米帝国主義を超えて
2017年9月、米国の大都市として初めてサンフランシスコ市に「慰安婦」メモリアルが建てられた。メモリアル建設を主導した「『慰安婦』正義連盟 (“Comfort Women” Justice Coalition)」には多様な人種、民族、文化、世代、運動経験をもった団体が所属しているが、実は米国内の多様性だけでなく、日本国内の「有色女性」とのつながりによって、大阪市や日本政府、在米日本人の歴史歪曲主義者たちからの妨害を乗り越え、メモリアル建設が実現した。このレクチャーでは、太平洋を横断する「有色女性」の連帯の実態と可能性について考える。
推薦図書
Lisa Yoneyama. Cold War Ruins: Transpacific Critique of American Justice and Japanese War Crimes (Duke University Press, 2016)
★堅田香緒里(かただ かおり) 担当日 7/22 sun 13:00
静岡県生まれ。ゆる・ふぇみカフェ運営委員、法政大学社会学部教員。女の暮らしとか貧困、社会保障について考えています。近年は、ベーシックインカムの夢と現に思いを馳せています。発酵が好きです。講義テーマ:「家事労働に賃金を」から「ベーシックインカム」
資本主義は、女の身体・労働の徹底した「植民地化」を通して生き延びてきた。これに対抗し、それゆえ抑圧されもしてきたのが「魔女」である。本講座では、「家事労働に賃金を」という標語で資本主義に抵抗した70年代の魔女たちの要求を紐解き、これを現代のベーシックインカムの要求につなげて考えてみたい。
推薦図書
マリアローザ・ダラ・コスタ(1997)『家事労働に賃金を―フェミニズムの新たな展望』インパクト出版会
[秋期の講師] (※9/16更新)
★堀川修平(ほりかわ しゅうへい) 担当日 10/2 tue 19:00
東京学芸大学院生 都留文科大学など非常勤講師 “人間と性”教育研究協議会本部幹事〈性〉と教育、特に運動の中での学びと人間形成が専門。学部時代に参加した性教育研究運動によって、自分が〈性〉に関わる問題で苦しんでいるのだと気づけたのが研究に取り組むようになったきっかけとなっています。
講義テーマ:じぶんごととしての“性の多様性”と教育・運動
「LGBT」について学ぶ機会は、今日さまざまな所で増えてきています。しかし、「LGBT」を学ぶ、ということで良いのでしょうか?ワークを中心に、じぶんごととして“性の多様性”について一緒に考えてみましょう!
推薦図書
ベル・フックス、堀田碧訳(2003)『フェミニズムはみんなのもの:情熱の政治学』新水社
★松波めぐみ(まつなみ めぐみ) 担当日 10/21 sun 14:00-17:00 (特別講座)
大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得退学(生涯教育学)、(公財)世界人権問題研究センター研究第五部(人権教育)専任研究員を経て、現在、立命館大学生存学研究センター客員研究員。大阪市立大学、関西大学、龍谷大学ほか非常勤講師。主な著作に「障害者権利条約ーー『同じ』権利を実現するために」(『地球市民の人権教育ーー15さいからのレッスンプラン』解放出版社、2015年)、「障害をもつ女子の『ジェンダー化』と教育」(『ジェンダーで考える教育の現在』解放出版社、2008年)など。講義テーマ :フェミニズム・ワークショップ「障害の社会モデルとジェンダー~障害女性にとって社会的障壁とは~」
障害者が直面する困難の原因を、身体の解剖学的特徴ではなく、健常者中心社会が設けた障壁に求める「障害の社会モデル」の考え方は、もとよりジェンダー概念と類似している。障害女性が経験する困難の背後には障害者差別と性差別が複雑に絡み合っているが、それを解きほぐすのは容易ではない。2008年頃より京都の障害女性とともに差別禁止条例をつくる運動に参加してきた、その過程で考えたことについて。
*個別エントリーはこちらから http://femizemi.blogspot.com/2018/10/blog-post.html
★朴金優綺(ぱくきむ・うぎ) 担当日 11/13 tue 19:00
在日本朝鮮人人権協会事務局員/朝鮮大学校講師/歌手在日朝鮮人3世の人権活動家。朝鮮学校差別問題や日本軍性奴隷問題について国連人権機関で働きかけを行ってきた。『だれもがいきいきと生きられる社会のために 性差別撤廃部会連続講座の記録&「在日同胞のジェンダー意識に関するアンケート」結果報告書』(在日本朝鮮人人権協会 性差別撤廃部会、2015年)の責任編集者。
講義テーマ:だれもがいきいきと生きられる社会のために~在日朝鮮人女性と複合差別~
レイシズムやセクシズムがはびこる日本で、民族やジェンダーなど複数の属性に基づく「複合差別」の対象となる在日朝鮮人女性。本講座では、在日朝鮮人女性が被る複合差別の実態と、在日朝鮮人女性によるフェミニズム運動の一端をお話します。
推薦図書
在日本朝鮮人人権協会 性差別撤廃部会 編集・発行(2015)『だれもがいきいきと生きられる社会のために 性差別撤廃部会連続講座の記録&「在日同胞のジェンダー意識に関するアンケート」結果報告書』
*ご注文はこちらから http://dareiki.org/publications/
★磯野真穂(いその まほ) 担当日 11/27 tue 19:00
文化人類学者。留学中に専攻を運動生理学から文化人類学に変更し、シンガポールと日本で拒食と過食のフィールドワークを10年に渡り実施。主な著書に『なぜふつうに食べられないのかー拒食とか食の文化人類学』『医療者が語る答えなき世界ーいのちの守り人の人類学』
講義テーマ:どんな身体になりたいですか?ー身体変工から考えるダイエット
纏足、コルセット、そしてダイエット。人間は美しくなるためなら身体を傷つけることを厭わない変わった生き物です。古今東西行われてきた人間の身体変工の事例を紹介しつつ、現代社会に見られるダイエットから摂食障害までを文化人類学の視点から考えます。
推薦図書
上橋菜穂子『獣の奏者』全11巻
★高柳聡子(たかやなぎ さとこ) 担当日 12/11 tue 19:00
福岡県生まれ。大学非常勤講師。翻訳者。専門はロシア文学、ロシアの女性史。歴史にから抜け落ちたロシアの女性たちの声を拾い集めながら歩いている。最近は中央アジアのジェンダー思想にも注目している。講義テーマ:ソ連のフェミニズムからロシアのフェミニズムへ
ソ連時代のフェミニズム運動は「家庭へ戻りたい」という女性たちの訴えから始まった。西側とは逆のソ連の女性たちの声と、現在のロシアのフェミニズム運動に目を向け、真の平等を考えるための問題点を指摘したい。
推薦図書
高柳聡子著(2018)『ロシアの女性誌』群像社
★飯島裕子(いいじま ゆうこ) 担当日 12/19 wed 19:00
ノンフィクションライター、大学講師。『ビッグイシュー日本版』等で取材、執筆を行っているほか、大学講師を務めている。著書に『ルポ貧困女子』(岩波新書)、『ルポ若者ホームレス』(ちくま新書)がある。一橋大学大学院社会学研究科博士課程満期退学。
講義テーマ:若年女性の生きづらさと働きづらさについて考える
古くて新しいテーマである女性の貧困。しかし若年男性に比べ問題化されて来なかった。10代~40代前半の女性たちへのインタビューによって浮き彫りになった現実を見つめながら、私たちはなぜ生きづらいのか共に考えていく。
推薦図書
小杉礼子、宮本みち子編著(2015)『下流化する女性たちー労働と家族からの排除と貧困』明石書店
★瀬戸徐映里奈(せと・そ えりな) 担当日(予定) 1/8 tue 19:00
東京福祉大学国際交流センター特任助教。兵庫県生まれ。専門は移民・難民研究、地域研究、社会学。研究テーマ:在日ベトナム難民の生活世界を日常の営みである「食」と「農」から描き、多民族化が加速する日本社会の実態と変容を捉えること。論文に「食の調達実践にみる在日ベトナム人の社会関係利用:一世世代に着目して」ソシオロジ62(1),61-78,2017など。講義テーマ:ひとりの「住民」がフィールドワーカーになるときー異なる立場の女性たちとの連帯を模索して
1975年に終結したベトナム戦争以後、約200万人のベトナム人たちが本国を「難民」として脱出し、日本も含む世界各地に受け入れられた。そんな難民たちを受け入れた「ある」町で生まれ育った発表者はなぜベトナム難民たちのコミュニティ研究を志したのか。フィールド調査に至るまでの発表者の「ライフヒストリー」を切り口に、調査をするなかで出会った異なる立場の人びと、女性たちとの出会いの経験から、「わたし」と「あなた」の関わりに潜む歴史の重層性と権力構造について考える。
推薦図書
リサ・ゴウ、鄭暎恵(1999)『私という旅』青土社