こんにちは。ここ数日は暖かかったりめっきり冷え込んだり、服装に気を遣いますね。
ブログの更新が遅くなりすみません。11月13日のふぇみ・ゼミでは、講師に在日朝鮮人3世の朴金優綺(ぱくきむ・うぎ)さんをお招きし、「だれもがいきいきと生きられる社会のために―在日朝鮮人女性と複合差別―」をテーマに講義をしていただきました。
以下、TAの感想リレーです。今回の担当はAです。
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在日朝鮮人女性は、在日朝鮮人であるということと女性であるということの2点において差別にあっています。このように複数の属性が結びついた差別を「複合差別」と言います。例えば、在日朝鮮人への差別でヘイトスピーチやヘイトクライムが大きな問題となっていますが、中でもチマチョゴリを切られたり性暴力を容認するような暴言が吐かれたりするなど、女性だから経験する差別があるのです。民族差別的なヘイトスピーチで名誉を傷つけられたとして在日朝鮮人の女性が起こした裁判では、人種差別と女性差別の複合差別だということが2017年に認められています。
朴金優綺さんがスタッフを勤めていらっしゃる「在日朝鮮人人権協会」内で設けられた「性差別撤廃部会」は、民族や性、階級などにもとづくあらゆる差別と暴力を認識し、行動することによって繋がり、「だれもがいきいきと生きられる社会」の実現を目指しています。まなぶ、うごく、つながるという三本柱で活動し、具体的な活動としては、例えば在日朝鮮人セクシュアル・マイノリティの交流会などを開催し、日常の互いの悩みや葛藤を分かち合う場を設け、マイノリティ同士の連帯を目指しています。「だれいき」のホームページ(http://dareiki.org)にはその思いが以下のように書かれています。
民族や性がからまってなされている社会的な抑圧のありかをともに探るために、連帯を呼びかけます。あらゆる朝鮮人が、あらゆる女性が、真の解放の果実を分け合うために、互いの痛みへの想像力と、不可解なことに歩み寄る意思を求めます。
そのために私たちも、在日朝鮮人の女性のみならず、性的少数者、貧困者、ダブルや「混血」者、障害者、精神疾患を含む病者、その他あらゆる疎外された人びとの声を組み入れる努力を惜しみません。
今回の講義で一番に思い浮かんだのは、中学高校と同じ学校に通ってきた私の友人のことでした。ここから、少しだけ個人的なことを書いてみます。
以前から時々プライベートな話をする仲ではありましたが、私が彼女のエスニシティについて触れたことはほとんどありませんでした。それがこの夏に一緒に旅行をして、初めて、彼女が在日韓国人として経てきた事柄の一端を知ることになったのです。
彼女だけ日本国籍ではないため身分証明証の提示を求められていることに、物凄く違和感を覚えながらもゲストハウスに泊まった私たちは、多くの人が友人との旅行でそうするように、学業や恋愛、その他いろいろな楽しくて親密な話題について夜な夜な話をしました。文章を書くのが上手い彼女は、校内の文集に度々掲載されていました。そのことについて彼女は、「うん、でも私はこの名前(韓国系の名字)だから、あまり政治的なことは書かない方が良いって母には言われてる」と言いました。私は、彼女が文字に残る自分の文章について、そのような危惧を抱いているとは、言われるまで全く考えてもみなかったのです。将来何をしたいかという話で、官僚になる可能性を検討すれば、「でも私は日本国籍を持っていないからそもそも無理ではあるんだけど」とさらっと述べます。昨今の政治について鬱憤を晴らしあっていると、「私は選挙権がないから投票できないのが残念ではあるけど」と。私はちょうど選挙権が18歳に引き下げられた時にその年齢だった者です。高校では、誕生日を迎え選挙権のある人は是非選挙に行くように、と促されていました。そんな中、年齢に関わらずそもそも選挙権を持たない友人が同じ教室にいるとは、想像が至らなかったのです。これは、私にとって特に強く印象に残った会話であり出来事でした。
朴金優綺さんが活動の原点として発した「この苦しみのありかを探りたい、取り除きたい」という言葉の重みに、私はなかなかこの感想レポートを書き始められないでいました。ある人の抱える痛みや苦しみに想像力を働かせるというのは、言わずもがな非常に難しいことです。しかし一方で、想像によって、もしくは経てきた同じ経験によって他者と繋がることが、どんなに喜ばしく、癒しになり、希望に満ちているかを私は知っています。「あらゆる疎外された人びとの声を組み入れる努力を惜しみません」と、そう言えるようになりたいと思いました。
―――
朴金優綺(ぱくきむ・うぎ) 担当日 11/13 tue 19:00
在日本朝鮮人人権協会事務局員/朝鮮大学校講師/歌手
在日朝鮮人3世の人権活動家。朝鮮学校差別問題や日本軍性奴隷問題について国連人権機関で働きかけを行ってきた。『だれもがいきいきと生きられる社会のために 性差別撤廃部会連続講座の記録&「在日同胞のジェンダー意識に関するアンケート」結果報告書』(在日本朝鮮人人権協会 性差別撤廃部会、2015年)の責任編集者。
ブログの更新が遅くなりすみません。11月13日のふぇみ・ゼミでは、講師に在日朝鮮人3世の朴金優綺(ぱくきむ・うぎ)さんをお招きし、「だれもがいきいきと生きられる社会のために―在日朝鮮人女性と複合差別―」をテーマに講義をしていただきました。
以下、TAの感想リレーです。今回の担当はAです。
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在日朝鮮人女性は、在日朝鮮人であるということと女性であるということの2点において差別にあっています。このように複数の属性が結びついた差別を「複合差別」と言います。例えば、在日朝鮮人への差別でヘイトスピーチやヘイトクライムが大きな問題となっていますが、中でもチマチョゴリを切られたり性暴力を容認するような暴言が吐かれたりするなど、女性だから経験する差別があるのです。民族差別的なヘイトスピーチで名誉を傷つけられたとして在日朝鮮人の女性が起こした裁判では、人種差別と女性差別の複合差別だということが2017年に認められています。
朴金優綺さんがスタッフを勤めていらっしゃる「在日朝鮮人人権協会」内で設けられた「性差別撤廃部会」は、民族や性、階級などにもとづくあらゆる差別と暴力を認識し、行動することによって繋がり、「だれもがいきいきと生きられる社会」の実現を目指しています。まなぶ、うごく、つながるという三本柱で活動し、具体的な活動としては、例えば在日朝鮮人セクシュアル・マイノリティの交流会などを開催し、日常の互いの悩みや葛藤を分かち合う場を設け、マイノリティ同士の連帯を目指しています。「だれいき」のホームページ(http://dareiki.org)にはその思いが以下のように書かれています。
民族や性がからまってなされている社会的な抑圧のありかをともに探るために、連帯を呼びかけます。あらゆる朝鮮人が、あらゆる女性が、真の解放の果実を分け合うために、互いの痛みへの想像力と、不可解なことに歩み寄る意思を求めます。
そのために私たちも、在日朝鮮人の女性のみならず、性的少数者、貧困者、ダブルや「混血」者、障害者、精神疾患を含む病者、その他あらゆる疎外された人びとの声を組み入れる努力を惜しみません。
今回の講義で一番に思い浮かんだのは、中学高校と同じ学校に通ってきた私の友人のことでした。ここから、少しだけ個人的なことを書いてみます。
以前から時々プライベートな話をする仲ではありましたが、私が彼女のエスニシティについて触れたことはほとんどありませんでした。それがこの夏に一緒に旅行をして、初めて、彼女が在日韓国人として経てきた事柄の一端を知ることになったのです。
彼女だけ日本国籍ではないため身分証明証の提示を求められていることに、物凄く違和感を覚えながらもゲストハウスに泊まった私たちは、多くの人が友人との旅行でそうするように、学業や恋愛、その他いろいろな楽しくて親密な話題について夜な夜な話をしました。文章を書くのが上手い彼女は、校内の文集に度々掲載されていました。そのことについて彼女は、「うん、でも私はこの名前(韓国系の名字)だから、あまり政治的なことは書かない方が良いって母には言われてる」と言いました。私は、彼女が文字に残る自分の文章について、そのような危惧を抱いているとは、言われるまで全く考えてもみなかったのです。将来何をしたいかという話で、官僚になる可能性を検討すれば、「でも私は日本国籍を持っていないからそもそも無理ではあるんだけど」とさらっと述べます。昨今の政治について鬱憤を晴らしあっていると、「私は選挙権がないから投票できないのが残念ではあるけど」と。私はちょうど選挙権が18歳に引き下げられた時にその年齢だった者です。高校では、誕生日を迎え選挙権のある人は是非選挙に行くように、と促されていました。そんな中、年齢に関わらずそもそも選挙権を持たない友人が同じ教室にいるとは、想像が至らなかったのです。これは、私にとって特に強く印象に残った会話であり出来事でした。
朴金優綺さんが活動の原点として発した「この苦しみのありかを探りたい、取り除きたい」という言葉の重みに、私はなかなかこの感想レポートを書き始められないでいました。ある人の抱える痛みや苦しみに想像力を働かせるというのは、言わずもがな非常に難しいことです。しかし一方で、想像によって、もしくは経てきた同じ経験によって他者と繋がることが、どんなに喜ばしく、癒しになり、希望に満ちているかを私は知っています。「あらゆる疎外された人びとの声を組み入れる努力を惜しみません」と、そう言えるようになりたいと思いました。
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朴金優綺(ぱくきむ・うぎ) 担当日 11/13 tue 19:00
在日本朝鮮人人権協会事務局員/朝鮮大学校講師/歌手
在日朝鮮人3世の人権活動家。朝鮮学校差別問題や日本軍性奴隷問題について国連人権機関で働きかけを行ってきた。『だれもがいきいきと生きられる社会のために 性差別撤廃部会連続講座の記録&「在日同胞のジェンダー意識に関するアンケート」結果報告書』(在日本朝鮮人人権協会 性差別撤廃部会、2015年)の責任編集者。