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【2020年度秋季ふぇみゼミ】 スタッフ感想リレー(5)

 こんにちは!スタッフのMです。

先日11月13日(金)に、第二回目の秋期ふぇみゼミが行われました!

講師としてお迎えしたのは、神戸薬科大学准教授の小門穂(こかど みのり)さんです。小門さんは、生命倫理学・医療倫理学・科学社会技術論を専門にご研究されており、今回のゼミではフランスの生殖医療をテーマにお話しいただきました。

フランスでは、生殖医療に関する議論は1986年から始まっており、また生殖医療を男女カップルに限定するということが早い段階で定められていたと言います。99年にPACS (Pacte Civil de Solidarité)法が可決されているものの、生命倫理法により独身者や同性カップルの利用は認められませんでした。

フランスでは「男女がいて子が生まれる」という生殖観が根強く残っており、そうした価値観が政策に反映されてきました。しかし現在少しずつ変容してきている段階であるといいます。

その事例として印象に残っているお話は代理出産に関することです。これまでは、外国で代理出産により生まれた子の、フランス国内での親子関係を認めてきませんでしたが、2016年、19年と欧州人権裁判所による判決を契機に、父子関係、及び依頼した女性との母子関係が認められるようになったそうです。

一方でトランスジェンダーカップルと生殖医療に関する事例では、今年の9月に、Mt F女性を「生物学的親」として記載するかどうかの裁判の判決が出て、記載は認められなかったという、まだまだ当事者の希望が通っていないという現実も知りました。

2021年を目標に改正が予定されている生命倫理法の争点は「女性カップルとシングル女性の生殖医療拡大」と、代理出産で生まれた子どもとの親子関係に関するものだそうです。

しかし、生殖医療を男女カップル以外に拡大することに対して、フランス国内では強い反発があるといいます。

日本でもメディアで取り上げられ記憶に新しい、黄色いベスト運動では“家族を守れ”というスローガンが掲げられ批判運動が起こりました。反対派団体では生殖医療を拡大することは「家族を壊すこと」という批判があるそうです。一連のお話を聞き、生殖医療に関する事柄は、生殖医療そのものが持つ複雑性と共に、医療を受ける当事者の中でも男女カップルか、そうでないかという立場での分断や意見の相違が発生するのだということを学びました。だからこそ慎重で丁寧な議論が不可欠であるとも考えます。

さらに日本とフランスの生殖医療の捉え方に関する違いに関する話も興味深かったです。日本では、少子化対策の一環としての不妊治療をはじめとした生殖医療という認識が強いですが、フランスでは人口政策といった文脈で行われていないということです。

この講義と非常に関連深い話題として、11月12日に国会で不妊治療の特例法案が提出されました。蓄積された議論があるわけではなく、唐突に不妊治療に保険を適用すると言い始め、またこのような法案が出されることに非常に違和感を覚えます。長らく審議が続けられているフランスでさえも、生殖医療に関することにまだまだ課題はあるのだと理解できた一方で、日本の現状を見ると生殖医療が、少子化対策と銘打った小手先の議論で済まされていくのではないかという疑念を持ちます。私とって馴染みの薄い生殖医療分野の講義でしたが、これからの日本の問題をみていく上で参考になるお話でした。

次回は12月16日(水)に開催されます!

受講生の皆様は引き続き、秋期ふぇみゼミにご参加ください!


【ゼミ情報】

日時:11/13(金)19:00~21:00

講師:小門穂さん(神戸薬科大学):大阪府泉大津市出身。大阪大学助教。研究領域は、生命倫理学、医療倫理学、科学技術社会論。生殖医療をとりまく制度の作られ方に関心を持っています。最近は、日本やフランスで、第三者の関わる生殖医療において、どういった要素が「親となる人」を決定するとみなされているのかという点に特に興味を持ち研究しています。

フランスでは、世界的にも早い時期である1994年に生殖医療に対する法規制が整えられ、その後も、改正が重ねられてきました。男女のカップルだけが利用できると定められている生殖医療は、2020年中には女性カップルへと拡大されようとしています。本講義では、フランスの議論に触れながら、第三者の関わる生殖医療の問題点や、セクシュアル・マイノリティによる利用に関する議論について検討したいと考えています。


推薦図書:柘植あづみ『生殖技術――不妊治療と再生医療は社会に何をもたらすか』みすず書房、2012年

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