こんにちは。
ふぇみ・ゼミスタッフのAです。
梅雨入りして雨の日が多くなりましたが、みなさまはいかがお過ごしでしょうか。
さて先日、嶽本新奈さんを講師にお迎えして第2回目のふぇみ・ゼミが行われました。
テーマは「近代史の中の女性と越境ーー『からゆきさん』を事例として」です。
ゼミでは、「からゆきさん」になるまでの複層的な権力関係を多様な視点で見ていきました。そうすることで、それらがどう現代につながっているのか考えるきっかけになりました。
1970年代に山崎朋子の『サンダカン八番娼館』や森崎和江の『からゆきさん』が出版され、外国で性売買に従事する女性の総称として「からゆきさん」という言葉が広く知られるようになりました。
講義の中では「からゆきさん」になるまでの経験について、社会的背景を読み解くためにいくつかの視点が提示されました。
その中で印象に残ったことは、1896年に移民保護法が施行され、売春をする者や売春業者の海外渡航が禁じられたにも関わらず、中国と朝鮮については日本人街や植民地への公娼制度輸出のために適応除外されていたことです。
これは、日本人男性の移動や定住のためには女性による性的慰安が必要との認識からでした。
のちの「慰安婦」制度とのつながりを考えずにはいられません。
人々の困窮、制度、法律、差別意識などの複層的な権力のなかで、ジェンダー、階級、エスニシティ、植民地主義が絡み合っていたことを知り、講義で学んだことが過去の出来事ではなく現代にある問題と連続していることを強く感じました。
質疑応答の時間も、女性のダブルスタンダードのことや、植民地主義の連続性についてなど活発な議論が交わされ、とても充実した時間でした。
引き続き、考えていきたいです。
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日時:2020年6月17日(水)19:00〜21:00
講師:嶽本新奈(たけもとにいな)さん
埼玉生まれの天草育ち。一橋大学大学院言語社会研究科博士課程修了。専門は日本近代史、ジェンダー史、移民史研究。明治学院大学国際平和研究所助手。首都圏の大学で非常勤も。授業では人権やジェンダーなどを教えています。
テーマ:「近代史の中の女性と越境ーー『からゆきさん』を事例として」
明治以降に海外へ渡り、渡航先で売春をしていた「からゆきさん」と呼ばれる女性たちがいました。歴史教育の中で取り上げられることがない彼女たちに焦点を当て、彼女たちを取り巻く制度や時代状況を確認し、彼女たちをどう捉えるべきかを一緒に考えたいと思います。
※おすすめの書籍1冊:森崎和江(2016)『からゆきさんーー異国に売られた少女たち』朝日文庫