2020年は第二次世界大戦終結から75年を迎えます。日本にとっては敗戦、アジア太平洋地域にとっては解放75年となり、2020年は今まで以上に重要な年であることは言うまでもありません。
75年が経過した世界は、あの恐ろしく残忍な戦争、その戦争の下地となった植民地・占領のことを「忘却」したかのような状況です。
しかし、新型コロナウィルスが世界を席巻する中だからこそ、現在の問題との接合点をみつけながら、思考しなくてはなりません。
その根底に横たわるのは、いまだに達成されていない、戦争責任、植民地支配責任、占領地責任です。
本企画は、戦争責任、植民地支配責任、占領地責任等に関心の強い研究者・運動家などを呼び、ふぇみ・ゼミの視点からこの問題を捉え、「いま何をしなければならないのか」「いま何ができるのか」を考えます。全てオンライン配信での実施です。
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*スケジュール予定(全8回)
【第1回】8月31日(月) 19:00-21:00 テーマ:解放75年から思考するー植民地朝鮮とはどのような状況だったのだろうか?
講師:洪昌極(ほん・ちゃんぐっ)さん(歴史学研究会委員) 朝鮮近現代史、植民地期朝鮮における農業移民や干拓事業など、水利秩序を軸とした研究をすすめる。2020年4月に「朝鮮植民地化過程における水利施設の国有化と水利権 」を発表。
<内容>
日本による植民地支配は朝鮮に何をもたらしたのだろうか。政治・経済・文化あらゆる側面の収奪が浮き彫りになってきている。特に、社会構造を支える経済分野の打撃は解放後の国家のあり方にも影響してくる。
参考文献:中塚明『これだけは知っておきたい 日本と韓国・朝鮮の歴史』高文社、2002年
【第2回】9月15日(火) 19:00-21:00 テーマ:「近代日本の戦争障がい者」
講師:松田英里(まつだ・えり)さん(公益財団法人政治経済研究所研究員/早稲田大学本庄高等学院教諭)
<内容>
「戦争の惨禍」や国家・社会の矛盾の象徴とされる一方、待遇改善の声をあげ、戦時は総力戦体制に組込まれた「癈兵」。日露から日中戦争までの軌跡と戦場・戦争体験の固有性を明らかにする。その上で、戦争責任とは何かを考えるきっかけにしたいと思う。
参考文献:松田英里「近代日本の戦傷病者と戦争体験 、 日本経済評論社 、2019
【第3回】9月25日(金) 19:00-21:00 テーマ:「日本の国家補償・戦没者慰霊追悼とジェンダー」
講師:千地健太(ちじ・けんた)さん(一橋大学大学院博士後期課程単位取得退学。東京大空襲戦災資料センター学芸員。https://tokyo-sensai.net/)
<内容>
本講義では、日本の戦争による被害(特に人的被害)への金銭的な補償の在り方と、それと関連する公的な戦没者慰霊・追悼について概説する。これによって、日本が過去の戦争とどう向き合ってきたか、その一端を知ることができる。また、ジェンダーの視点から見た時に注目すべき点についても触れてみたい。
参考文献:田中伸尚、田中宏、波田永実、1995『遺族と戦後』岩波新書
【第4回】10月20日(火) 19:30-21:30 テーマ:「ジェンダーと国家暴力、責任の問題:台湾228事件を題材に(仮)」
講師:沈秀華(Shen Hsiu-hua)さん(台湾・国立清華大学社会学研究所所長)
<内容>
228事件の中で、死亡した人、監禁された人の多くは男性で、その配偶者は「政治的寡婦」と私が呼ぶ状態になった。
この講座は、ジェンダーの視点から、国家暴力のジェンダー化された影響と経験を論じ、男女の経験した差異ある国家暴力の視点から、私たちが暴力の後の正義の要求を推進するとき、正義とは一体何か、誰に対する正義化を考える。ジェンダーとそのほかのアイデンティティが交差するとき、私たちは国家暴力に対しどのような反省をしなければならないのだろうか。
【第5回】11月9日(月) 19:00-21:00 テーマ:「脱植民地と在日朝鮮人女性による抵抗」
講師:李杏理(り・へんり)さん(大学非常勤講師)<内容>
1945年、日本の敗戦により朝鮮は植民地政策のくびきから解かれた。と同時に、すでに故国の生活基盤を失っていたため日本に残った朝鮮人の多くが職を失った。敗戦後の混乱と貧困のさ中、在日朝鮮人女性たちは酒づくりの知恵を発揮した。当時の状況とジェンダーや年齢を超えて行われた「濁酒闘争」の軌跡をたどる。
脱植民地の過程でなされた濁酒闘争は、公権力への異議申し立てや裁判を通じて生活の現実や家族関係を明るみにした。貧苦と社会的疎外にあった朝鮮女性たちは、資本主義/植民地主義/家父長制の矛盾が集約した場で、否応なしに交差性を体現した存在であり、生活の中で「脱帝国のフェミニズム」を実践した。
参考文献:宋連玉『脱帝国のフェミニズムを求めて』有志舎、2009年
宋恵媛「在日朝鮮一世女性と文学」『朝鮮学報』(223) 2012年4月
【第6回】11/27 19:00〜21:00
テーマ:「中国における日本軍戦時性暴力名誉回復運動:国家謝罪なきフィールドを調査する」
講師:熱田敬子(あつた・けいこ)さん(ふぇみ・ゼミ運営委員、日中通訳・翻訳、大学非常勤講師)
<内容>
日本軍が組織的に運営した日本軍性奴隷制および、性奴隷制が促進した常態化した戦時性暴力の被害者たちは、現在に至るまで謝罪と賠償を日本政府に求め続けている。
中国では、山西省と海南島の二ヶ所から合計3件の日本軍戦時性暴力被害者による対日訴訟が起き、それぞれ被害事実は認定されたものの、他の日本軍性奴隷制/戦時性暴力裁判と同じく原告の請求は棄却されている。
被害女性たちが中日の様々な人々を巻きこんだ闘いは、原告の権利意識を回復させ、社会に大きな影響を与えた。
その反面、日本政府の謝罪と国家賠償が行われないことで、中国においても彼女たちの闘いの意味が十分に理解されているとはいいがたい現象も起きている。
報告者は2010年から中国でのフィールドワークを行い、また韓国、台湾、香港など他の地域の状況と比較する中で、謝罪がなされないことのフィールドへの影響を強く感じてきた。
日本の敗戦から70年が経ち、中国の対日訴訟原告は全員がこの世を去っている。
闘い続けて亡くなった被害者に「同情」するのではなく、「名誉回復」するためにどのような社会を作ればよいのか。それは、歴史ではなく、現在を生きる私たちの問いである。
参考文献:熱田敬子、2018「日本軍戦時性暴力/性奴隷制問題との出会い方――ポスト『証言の時代』の運動参加」、牟田和恵編『架橋するフェミニズムー歴史・性・暴力』松香堂(電子書籍として無料配布 http://hdl.handle.net/11094/67844)
【第7回】12月8日(火)19:00-21:00 テーマ:「日本占領地香港~広東・香港・マカオ・ 三灶島~」
講師:和仁廉夫(わに・ゆきお)さん
<内容>
阿片戦争以来英国の植民地だった香港は、 アジア太平洋戦争で日本軍最初の占領地だった。だがそこには「 香港人」はおらず、いたのは「香港の中国人」である。 香港占領の《三年八箇月》は、1938年の三灶島占領・広東・ 深圳占領。 そして占領を免れた旧ポルトガル領マカオとの有機的なつながり無 くして語れない。近年「香港防衛戦」 の再評価や日本軍戦犯を顕彰する動きさえあるが、 これらが誤りであることを、史実に即して説明したい。
参考文献:和仁廉夫『歳月無聲~一個日本人追尋香港日占史跡~』 (香港・花千樹出版2013年・中文繁體)、蒲豊彦・浦島悦子・ 和仁廉夫(共著)『三灶島事件~日中戦争下の虐殺と沖縄移民』( 現代書館2018年)、森島守人『真珠湾・リスボン・東京』( 岩波新書青版1950年)南支派遣軍報道部編『南支派遣軍』( 写真集1940年)
【第8回】12/17(木) テーマ:「男のヒステリー」とジェンダー・人種・階級
講師:中村江里さん
<内容>
近代の総力戦は、男性の身体及び精神の脆弱性を露呈させ、「男のヒステリー」である戦争神経症が多数出現したという点で、 大きなインパクトを持っていた。本報告では、 日中戦争が全面化した1937年以降、 本格的な戦争神経症対策に取り組んだ日本軍を事例に、 戦争神経症の医学的解釈に、ジェンダーと人種・ 階級が複合的に及ぼした影響を考察する。
参考文献:中村江里『戦争とトラウマ』吉川弘文館、2017年
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*申し込みについて
すべてオンラインのセミナーになります。
申込者に対して、当日講座開始時刻までにZoomのURLパスワードなどの情報をお送りいたします。
Zoomには、チケット購入時に登録した名前でのご参加をよろしくお願いいたします。
※Zoom・Cisco・YouTube・Google Driveなどのオンラインシステムのサポートはしません。ご自身で各サイトなどをご覧ください。
※参加者の方で画面のキャプチャー、録画・録音はしないでください。
※電子配布資料については、お手元にとどめ、個人の参考としていただき、再配布、再利用、転送、転載はなさらないでください。
※ご自身が発言する時以外は、マイクをミュート(消音)にしてください(ホストの側でそのように設定します)。
<チケット> ※チケット購入時に、希望回を選択してください。
◆一般:1回券 1500円
◆学生:1回券 1000円
◆ふぇみ・ゼミ寄付者:1回券 1000円
◆ふぇみ・ゼミ生[2020年度後期参加者] 無料
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申し込みHP:https://femizemi-sensosekinin2020.peatix.com
ふぇみ・ゼミ公式HP:http://femizemi.blogspot.com/
主催:ふぇみ・ゼミ(問い合わせ:femizemi2017@gmail.com)